ツツジの季節が来るたびにいつも思う。
毎年毎年、なんとまぁ絶妙なタイミングで満開になるんだろう。
桜が散って、新緑が一番こんもりしていて、春の強風で空気が澄んでいるこの時期に、あんなに鮮やかな花を咲かせたらもう映えるしかない。
おぬし、計算しよったな。ひっひっひ。
趣味の一眼レフカメラを初めて持ち出した時も今ごろの季節だった。
フィルムだけど、撮り終ったらすぐに現像に出して一緒に見ようぜ。という企画で近所の公園に友人と出かけたら、上も下も右も左も溢れんばかりの新緑だった。
その緑の中で、さあ!アタシを見なさい!といわんばかりのツツジが見事に咲き誇っていた。
まんまと魅せられて、何枚も、何枚もツツジを撮った。
何枚も、何枚も。
何枚も、何枚も。
何枚も、何枚も…
何枚も…
………ん?
日が暮れて、現像に出しに行った。カメラの扱いがまだわからなかったので、カメラごと店員さんに渡した。
振り返った店員さんが、何と言っていいのかわからないというような顔をして言った。
フィルムが、巻けていません。
隣にいた友人も、何と言っていいのかわからないというような顔をして
ひゃ~ん。
とだけ言った。
あの鮮やかなツツジは、私の脳裏にだけ焼き付いた。
でも私は思う。あれが一番キレイに撮れている。その後何度もカメラを持って出かけたが、あれが一番美しく撮れていた。
それをみんなに見せてあげることができなくて本当に申し訳ない。
ほんとそう思う。
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